ベートーヴェン。この名前を知らない人はいないでしょう。本名は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン。音楽史でいう古典派時代に活躍した、言わずと知れたクラシックを代表する天才音楽家です。今も愛される名曲の数々。ベートーヴェンが作曲した音楽は現代でも演奏され続け、リスペクトされ続けています。ベートーヴェンは「既存の音楽を壊す天才」と言われていて、さまざまな音楽革新を行った音楽家です。「ベートーヴェンが行った音楽革新」、その代表的なものを紹介します。
ベートーヴェンはこんな「革新」もしている
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ベートーヴェンは自己表現のために作曲をした
自己表現のために作曲をする…。 作曲家なら当たり前ではないか!と思われるかもしれません。現在ではロックであれ J-POPであれ、ジャンルを問わず自己表現のために作曲し、音楽でメッセージを伝えることは当たり前です。しかしベートーヴェンの時代、簡単にはそれができなかったのです。叶わなかった時代なのです。ベートーヴェンの時代、音楽史では古典派音楽と言われています。この時代に活躍した偉大な作曲家はハイドン(1732-1809)やモーツァルト(1756-1791)です。ハイドンやモーツァルトはベートーヴェンの先輩に当たりますね。
ベートーヴェンよりも前の音楽家たちは、主に宮廷や貴族に仕えており、雇われの身でした。偉大な音楽家でさえもこの時代、まだまだ身分が低いという現実がありました。そう、あの天才モーツァルトでさえも一人の雇われ音楽家だったのです。雇われ音楽家である以上、スポンサーである宮廷や貴族に命ぜられるがままに作曲・演奏するのが仕事となります。雇い主が好み、彼らが楽しみ、喜ぶことを目的に作曲されるわけです。調性のとれた、アップテンポで華やか、もしくは軽やかな音楽。お茶でも飲みながら「ご機嫌いかがかしら〜、モーツァルトさんの音楽はやっぱり素敵でござ〜ますね〜」、「そうでござ〜ますね〜。でも私はやっぱりハイドンさんの音楽が好きでござ〜ますわ〜」と世間話で盛り上がるような音楽が好まれた。そう、この古典派の時代までは音楽は宮廷や貴族の娯楽でしかなかったのです。
ベートーヴェンも若い頃はモーツァルトやハイドンらと同じように宮廷に仕え、曲を演奏したり曲作りをしていました。しかしベートーヴェンは宮廷の「雇われ音楽家」では満足できなかった。音楽家の身分が低いことに納得がいかなかったのです。宮廷や貴族に命ぜられるがままに曲を作るのではなく、自由に曲を作り、自分の音楽を、才能を、世に問いたい!と思っていました。音楽家はもっと評価されるべきだと…..
そんなベートーヴェンの野心を後押しするかのように、フランス革命が起きます。王様が支配するフランス。フランス市民が自由と平等を勝ち取るために立ち上がり、市民革命を起こします。さらにはフランス国内だけでなく、ヨーロッパ中にフランスのように新しい市民社会をつくろうとする動きが広がりました。その流れにベートーヴェンも乗ります。市民が自由を手に入れたい!と立ち上がったのと同様、天才的な才能と実力があったベートーヴェンも自分の音楽を世に問うために、自由な音楽家として自由に曲を作っていきます。
ベートーヴェンが作る音楽は宮廷や貴族、教会が好む音楽ではありません。彼は自分の音楽を聴く人々をいい気分にさせなくていいと思っていました。ただそこにはベートーヴェンのメッセージがある。溢れ出てやまない熱い熱いメッセージ、人間的な感情がある。一人の音楽家として芸術家としての曲。「俺の曲を聴いている人々よ、お茶なんか飲むな、雑談するな!俺のこの音楽を、俺のメッセージをきけ!真剣にきけ。聴かぬなら出て行け!」そんな音楽を作っていきました!これが音楽の様式を大きく変える、音楽の歴史を大きく変える原動力となります。ベートーヴェン以後の作曲家で直接、間接にベートーヴェンの影響を受けていない作曲家は一人もいないでしょう。
ベートーヴェンは音楽に音の強弱を取り入れた
先ほども述べた通りベートーヴェンは人間の感情、メッセージを自分の曲で表現し、既存の音楽をどんどん破壊して音楽様式を変えていきました。そのような曲を作るためにベートーヴェンは音の強弱を積極的に取り入れていきます。もちろんベートーヴェン以前の作曲家も音の強弱を取り入れた作品をたくさん作っていますが、ベートーヴェンの曲は音の強弱が自在に変化し、なんといってもその振り幅が大きいのです。ダイナミクス(音の強弱の変化)がすごいのです。
実はこの時代、ピアノという楽器の製造技術の向上により、ピアノが改良に改良を重ねられ、ピアノの性能が飛躍的にアップした時代なのです。ピアノの性能が向上したことで奏でられる音域が広がり、より強くより大きな音が出せるようになりました。そう、ベートーヴェンが活躍した時代とピアノ(正確にはフォルテピアノ)の進化は見事に一致しているのです。モーツァルトの時代にもピアノ(フォルテピアノ)はあった。しかし、モーツァルトの時代はまだまだピアノの進化が追いついていません。同時に宮廷や貴族に属するモーツァルトのピアノ音楽は、彼らの好むアップテンポな曲、可愛らしい曲、華やかな曲、軽やかな曲が多かった。そこまでダイナミクス(音の強弱の変化)を必要としない曲です。
しかしベートーヴェンの曲は違った。まったく違います。ピアノソナタ第23番「熱情」は、その進化したピアノで作られたベートーヴェンの代表的なピアノソナタです。「熱情」はベートーヴェンの数あるピアノ曲の中でも最も激しい曲です。とにかく大胆に音の強弱が変化していきます。溢れ出るベートーヴェンの熱量を表現するのには、進化したピアノでないと表現できなかったでしょう。このベートーヴェンのダイナミックな演奏、すなわち大胆な強弱の音楽を聴いた人々は度肝を抜かれたことでしょう。
ベートーヴェンは大衆に向けて音楽を作った
ベートーヴェンは若い頃から飲んだくれな父親に代わり、貴族の娘のピアノ教師などをして一家の家計を支えていました。ピアノ教師として貴族の家に出入りしていたベートーヴェンは、民衆には想像もつかない貴族の豊かな暮らしぶりに矛盾を感じていました。
ベートーヴェンが難聴で苦しんでいたのは有名なことです。音楽家として最も大事な聴覚を奪われ、彼は苦しみ絶望し、自殺まで考えていました。しかしベートーヴェンは命を断ち切れず生きることを選択しました。芸術がベートーヴェンを引き止めたのです。 そして決意します….
身分の差、不自由、不平等….. 我々には望まない運命や宿命は否応無しに降りかかってくる。しかし決然とそれを受け止めていこう! 僕の才能、僕の芸術は貧しい人々、自由と平等を渇望する人々の運命を改善するために捧げられねばならない。その使命を達成せずして死ぬことはできない…. もっともっと人の心を揺さぶる曲を書いていこう! 立ち上がったベートーヴェンは自分の中に湧き起こる熱い思いや思想などを大衆に向けて音楽で表現し、次々と名曲を生み出していきます。まるでフランス革命でナポレオンがやってのけようとしたことをベートーヴェンは音楽の世界でやろうとするのです。
大衆に向けて放つベートーヴェンの音楽。名曲は数々ありますが、やはりその代表といえばベートーヴェンの最後の交響曲、「交響曲第9番」でしょう。日本では第九(ダイク)とも言われ親しまれていますね。
人生はいいことばかりではない、絶望や苦しみを味わうこともある。人生の様々な局面で襲ってくる悲しみに揺れ動く人間の感情。しかしそれを乗り越えた先には喜びがある。人間には力がある。我々民衆には変革するエネルギーがある。そう、フランス革命のように… 民衆よ困難へ立ち向かへ! 民衆よ己の力を信じて力強く歩んでいけ!「苦悩を突き抜け歓喜へ至れ」と….。民衆に向けて大きな大きなメッセージを放っているのがベートーヴェンの「交響曲第9番(ダイク)」なのです!
まとめ
ベートーヴェンは既存の音楽を壊し、多くの音楽革新を行ってきました。しかしこの記事で述べた「3つのベートーヴェンの音楽革新」、すなわち
「自己表現のために作曲」、「積極的に音の強弱を取り入れた音楽」 、「大衆に向けての音楽」を覚えておけば、ベートーヴェンの曲の聴き方もさらに味わい深いものとなるでしょう。今、私たちがJ-POP、ロック、R&B、ジャズなど様々なジャンルの音楽を楽しむことができるのは、ベートーヴェンがその礎を築いてくれたからなのです。現代の全てのミュージシャン、そしてその音楽を聴く我々は、意識するしないに関わらず、ベートーヴェンの影響下にいるのです。
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