音楽形式(=楽式 がくしき)のことを少し勉強しましょう!という記事です。音楽形式(=楽式 がくしき)とはどのように楽曲が構成されているか? ということ。少しでも音楽に携わっている人は楽式の基本を学ぶことは必須! 楽式の基本を学び、そこからインスピレーションを得ることは、あなたの音楽活動の発想の手助けをすること間違いなしです!
メロディーの構造
楽曲においてメロディーがどのような構造になっているか考えてみます。1曲における最小単位のメロディーを「モチーフ」と言います。モチーフのことを「動機」とも言います。モチーフは基本的に偶数小節からなります。2小節からなることが多いですね。曲の最小単位であり何らかのメッセージをもつ。それがモチーフです。このモチーフが核になり楽曲の個性が生まれるんです。
基本2小節からなるモチーフ(動機)。作曲家はこのモチーフをもとに曲を展開・発展させて行きます。モチーフとモチーフがつながり4小節になったものを小楽節といいます。さらにその小楽節が2つ繋がったものを大楽節と言います。モチーフが基本2小節からなるので、大楽節は8小節になることが多いです(例外あり)。そしてこの8小節からなる大楽節が全ての音楽形式の基礎となっています。これが大事! この大楽節が一つのまとまりのある音楽として私たちに届きます。私たちに馴染みのあるJ-POPだって、8小節が基本となって構成されているものが多いんですよ。
次から具体的に音楽形式の内容に入っていきます。
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一部形式
色々な音楽形式がある中でも、最も基礎となる形式が一部形式です。先ほども述べた通り、8小節からなる大楽節が全ての音楽形式の基礎となっていますが、この8小節の大楽節のみで構成されている楽曲を一部形式(または大楽節形式)といいます。
一部形式で用いられる8小節のフレーズ(楽節)を便宜上 「A」と表記します。途中に間奏などが入り「A」が繰り返され、 A—A となっても(何回Aが繰り返されても)一部形式であることに変わりわないです。すなわち一部形式はその楽節を反復できるんですね。一部形式は、シンプル、短い、覚えやすい、耳に残りやすい、などの特徴があります。だから童謡や民謡、子供向けの曲などを作るときに便利な形式。逆に一部形式を使って長い曲を作ろうとすると、同じ楽節 A をなんども繰り返すことになります。変化がないので聴き手は飽きてしまうだろう。
二部形式
二部形式は2つの異なる大楽節から構成されます。基本的には16小節になりますネ。2つの異なる楽節で構成されているというとこが大事で、2つの楽節が同じものだったら、それは一部形式となります。二部形式は一部形式とは違い、異なる楽節を繋げて変化させたものなのです。
表記としては A—B となります。
AとBが全く関係性がなく、両者の距離が遠ければ遠いほど面白い曲になるかもしれないが、音楽全体としての統一性がなくなってしまうのが現実です。やはり音楽全体のまとまりや統一性は大事。よって、実際はAとBは何らかの関係性を持っている場合が多い。この場合、楽式を A−A’ と表記したりします。 AとA’は類似した部分があり何らかの関係性を持っているということであり、全く同じではないことに注意して下さい。AとA’が全く同じだったら一部形式となりますから…..
さて、一部形式同様、二部形式も楽節を繰り返すことが可能です。2部形式をA–B と表記したとすると
A–A–B A–B–B A–A–B–B
なども2部形式として扱います。
三部形式
A-B-Cという三つの楽節から構成されているのが三部形式。A 、B 、C が関係性がなく、それぞれ異なるニュアンスを持っている曲も多数ありますが、実際は最初と最後が同じであるA–B–Aという形が非常に多い。BでAと対照的な曲調(メロディーを変えたり、調を変えたり…)にしてドラマチックに冒険して、最後またAに戻るんですね。
A–B–Aという形は非常に便利で 変化、展開、統一感を見事に内包しています。すなわち、中間のBが(このBはトリオなどと呼ばれる)、Aとの類似がなくお互いかけ離れた音楽だとしても、最後にAにまた戻ってくるので曲全体としての統一感を保てるのです。実際はA–B–Aの最後のAに変化をつけて飽きさせないようにした、A–B–A’が多い。
この3部形式は優秀な楽式であり、現在でも多様されています。音楽形式の根幹をなしているといっても過言でないでしょう。また三部形式を応用させ複雑にさせることも可能であり、この形式としての柔軟性も魅力ですね。
A–A–B–C A–A–B–A A–B–A’ A–A’–A
いずれも三部形式として扱います。三部形式を発展させたものとしてこれから記述する複合三部形式、ロンド形式、ソナタ形式などがあります。
複合三部形式
楽式として非常に優れた三部形式を複雑化させたものに複合三部形式があります。すなわち三部形式 A–B–C の各部分が二部形式や三部形式となっているものが複合三部形式。例えば
(A–B–A)–(C–D–C)–(A–B–A)とか
(A–B–A)–(C–C’)–(A–B–A)とか
(A–B)–(C–D)–(A–B) などなど……
A–B–C という三部形式を基盤に、各部分が二部形式や三部形式となっていて、複雑化しているのが分かります。
曲の出だしに「序奏」が置かれたり、曲の最後に曲を締めくくる「コーダ」が置かれることもあります。
序奏 –(A–B–A)–(C–D–C)–(A–B–A)– コーダ など…..
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ロンド形式
ロンド主題と呼ばれるメインの主題(A)が、エピソードと呼ばれる異なる旋律(メロディー)を挟みながら、交互になんども表れる形式。Aが交互にあらわれて 最後Aで終わる。A–B–A–C–A–D–A–E–A····M–A という形。
時代とともに少しずつロンド形式も変化します。次の2つの形式が主流になります。
A– B – A– C –A この形式は小ロンド形式と呼ばれていてロンド形式としては一番シンプルなもの。なおこの形を
(A–B–A) – C – A とすると、複合三部形式と見ることもできます。最後にコーダ(曲の締めくくりとして、もうひと盛り上がりさせるとこ)がついたりもします。 ベートーヴェンのピアノソナタ「悲愴」第2楽章は
(A–B–A)–C–A–コーダ
とする小ロンド形式ととれますね。
小ロンド形式があれば大ロンド形式もあります。大ロンド形式も複合三部形式です。この大ロンド形式はその後ロンドソナタ形式へと発展して行きます(後術)
(A–B–A)–C–(A–B–A)
ロンド形式は楽式として自由がきき、応用もしやすいので、多くの作曲家がこのロンド形式を取り入れています。
ソナタ形式
ベートーヴェンなどの天才作曲家がこぞって取り入れたソナタ形式。複合三部形式の完成系。
ソナタ形式を詳しく知りたい方→ソナタ形式とは何か? わかりやすく解説
ロンドソナタ形式
大ロンド形式 A–B–A–C–A–B–A は(A–B–A)– C – (A–B–A )と三つに分けることが可能です。すなわち大ロンド形式は複合三部形式なのですが、この大ロンド形式において、この部分は主調(主調とは楽曲の中心となる調)で演奏しようとか、ここは属調(属調とは主調の完全5度上の調)で変化をつけようとか….少し約束ごとを決めて、雛形化したのがロンドソナタ形式です。ロンドソナタ形式は大ロンド形式が発展したものなのです。
変奏曲形式
変奏曲とは主題(テーマ)となるメロディーのリズム・調子・旋律・拍子・コードなどを変えて、その曲の主題を装飾し変化させて行くこと。この変奏曲に用いられる形式が変奏曲形式となります。モーツァルトの「きらきらぼし変奏曲」やバッハの「ゴルトベルク変奏曲」などが有名。
A–A′–A′′–A′″…… ということですね。
まとめ
- 一部形式は8小節の大楽節のみで構成されている。8小節のフレーズ(楽節)「A」が何回繰り返されても一部形式。
- 二部形式は2つの異なる大楽節から構成される。二つのフレーズ(楽節)は類似した部分がある場合が多い。
- A-B-Cという三つの楽節から構成されているのが三部形式。よくあるA-B-A′の形式は変化、展開、統一感を見事に内包していて優秀!
- 三部形式を基盤に、各部分が二部形式や三部形式となっていて複雑化しているのが複合三部形式。
- ロンド主題と呼ばれるメインの主題が、エピソードと呼ばれる異なる旋律(メロディー)を挟みながら交互になんども表れるのがロンド形式。大ロンド形式と縮小版の小ロンド形式が主流。
- ソナタ形式はベートーヴェンなどの天才作曲家がこぞって取り入れたのがソナタ形式。複合三部形式の完成系。
→ ソナタ形式とは何か? わかりやすく解説 - ロンドソナタ形式は大ロンド形式が発展したもの。
- 変奏曲に用いられる形式が変奏曲形式。
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